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描き下ろしテレカに寄せたショートストーリーを書きおろして頂きました!
『恋人との歩き方/RPG編』
「こら……伸吾。いいかげんにしろ………」
最強呪文を入力して、これからラスボスの潜む地下神殿まで出かけようとした俺は突然視界を遮られてびっくりして、手に持っていたコントローラーを取り落としそうになった。
「!何すんだよ、一条──後少しなのに………」
魔王の手──ならぬ一条の手で、最終対決の場面を遮られて俺は抗議の声を上げていた。
「……おまえ………今が何時か解ってるのか?制服も着たままで──」
やっと目を覆っていた腕を下げてくれたんで俺は一条の方を振り返った。
「一条だって制服着てるじやないか!人の事言えるのか?」
「俺は部活で弓道場に行ってそこで着替えてから帰ってきた所だぞ。遅くなったんで急いで帰ってきたら、おまえが教室から引き上げてきた格好のままで、鞄も放り出してゲームに熱中していたんだ───」
一条にそう言われてやっと、俺は窓の外が真っ暗になっているのに気がついた。
後少し──レベル上げをしてチョットだけ頑張れば、目の前のゲームをクリアできるって解ってたから、ついつい夢中になってやってたんだけど………
「今から制服を着替えてぎりぎりだな。どうする?伸吾──」
「────?何が?一条、どっか出かけるのか?」
俺の問い掛けに、一条は心底呆れたような顔で俺の身体に回した手の力を強くしていた。
「俺は別にいいがな──伸吾がこのまま俺の相手をしてくれるっていうんなら………夕食の一回や二回、抜いても構わない」
耳元で囁くようにそう言われて俺はビクッと身体が震えるのを止められなかった。
そしてその後でやっと、一条の言葉の意味が頭の中にしみ込んできた。
「あー!飯!食堂が閉まる!」
一条の腕の中で俺はワタワタと暴れ出していた。
「早くしろ───待っててやるから………」
パッと手を放されて俺は勢い余って床に手を付いていた。
着替えるのも支度をするのも一条の方がなぜか早い。おまけに俺はたった今までやっていたゲームのセーブをしなくちゃならなかった。
「一条……今日のご飯何?先に行って席取っててくれ──俺、すぐ追いかけるから………」
ゲームの画面はさっきのまま止まっていた。これがRPGのいい所だった。アクションゲームならその場で死んでるだろう。でもセーブをするためには一定の場所まで移動しなくちゃならない。
「……せっかくここまで来たのに───」
とぼとぼと道を引き返す俺のキャラクター達は心なしか足取りも重いように感じられた。
「本日の夕食はショウガ焼き定食──デザートは苺だな。俺と同じ時間に寮に帰ってきた剣道部の連中が喜々として廊下で話していた」
「ううっ……セーブします。ゲームはいったん中断するからさ───頼むよ、一条……」
俺は彼の事を拝む真似をした。お代わりできないのは自業自得かもしれないけど、本日のご飯が売り切れってのは勘弁して欲しかった。
「ほかならぬ伸吾の頼みだからな。引き受けてやるぞ。これに懲りたら少しは時間や周りを気にするんだぞ─」
うるさい事を言うけど、一条は基本的に俺に甘い。途端に俺はにっこりと満面の笑みを浮かべていた。
「ありがとー、すぐ、すぐ行くからな………」
パッパッと制服を脱いでジーパンとシャツに着替えている俺の事を、一条はドアの側であきれ顔で見つめていた。
「なんだよ、何?服、変か?」
俺は何となく自分の着替えた服を見下ろして一条にそう聞いていた。
「………いや──色気も素っ気も無い脱ぎ方だな──と思っただけだ」
「一条!」
さすがにその言葉の意味は俺にだって理解できた。でも、普段の生活からそんなこといちいち意識してたら何をするのにも不自由でしょうがない。
俺は何となく気恥ずかしくなって本当に急いで一条の後を追いかけて食堂に走り込んでいた。
まだまだ経験値の低い俺の事を一条がちゃんと待っててくれてるのを知っていたから。
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